領収書を電子化して
保存する際の
ルールや法律、
メリットを解説
近年、領収書を電子化して保存する企業が増加しています。
この背景にはペーパーレス化の動きや、電子帳簿保存法といった法律の規制緩和があり、合わせるように紙の領収書をスキャンして保存するサービスも注目されています。
しかし、ひと言で領収書を電子化するといっても、法律で定められたルールを理解しなければいけないことや、税務署に申請が必要など大変に感じる人が多いようです。
そこで、領収書を電子化して保存する際に知っておきたいことをわかりやすく解説します。
領収書の電子化とは?
領収書の電子化とは、紙の領収書をスキャンしてPDFやエクセル、ワードといったファイル形式で保存することです。
自社のスキャナーを用いたり、外注のスキャニングサービスを利用することが一般的です。
電子化の目的は、領収書の整理をはじめ、ペーパーレス化に対応するため、さらには電子契約システムの導入に合わせてまずは領収書から電子化するなど様々です。
領収書を電子化して保存するメリット
紙の領収書を電子化して保存する3つのメリットについてご紹介します。
紛失や破損などが防げる
領収書の紛失や破れといった事故を防げます。
また、電子化して保存する場所を複数用意することで、大切なデータのバックアップも可能になります。
業務効率化につながる
経理清算に関連する手間や労力を大幅に削減でき、業務効率化につながります。
例えば、領収書のファイリング、保管場所への搬入、目視による確認作業などがすべて解消されます。
保管にかかるコスト削減
領収書の保管にかかるコストが削減できます。
仮に、保管場所として倉庫を借りている場合は賃料の削減が実現し、保管場所のキャビネットや段ボール類といった経費も削減できるようになります。
知っておくべき法律
領収書の電子化にあたり「e-文書法」と「電子帳簿保存法」のふたつを知っておかなければいけません。
e-文書法
e-文書法とは、保管が義務付けられている様々な書類を電子化して保存するための決まりごとを定めた法律です。
領収書を電子化して保存する際には、下記4つの要件を遵守しなければいけません。
見読性:パソコンなどで鮮明に読めること
完全性:書類の改ざんを防ぐ(電子署名やタイムスタンプを付与する)
機密性:不正アクセスや不正な閲覧を防ぐ(パスワードや操作ログの記録)
検索性:対象の書類を探しやすいこと
領収書を電子化して保存する際には、上記4つの要件を満たすことがポイントなので覚えておきましょう。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、領収書を含む国税関連の書類を電子化して保存するための決まりごとを定めた法律です。
領収書を電子化して保存する場合、この法律で定められた「3ヶ月前までに所轄の税務署に申請と承認を済ませること」を遵守する必要があります。
つまり、3ヶ月前までに申請をして承認を得なければならないことがポイントです。
領収書を電子化する際のルール
実際に紙の領収書を電子化して保存する際には、法律で定められたルールを守る必要があります。
3日ルール
領収書は原本を受領してから「概ね3営業日以内」に電子化しなければいけないルールがあります。
これは電子帳簿保存法で定められていることなので遵守しなければいけません。
電子化の具体的な内容は、領収書をスキャンまたは撮影し、タイムスタンプを付与することを指しています。
ただし、3日ルールが適用されるのは、領収書を受領した本人が電子化する場合であり、本人以外(経理部など)が原本を保管し電子化する場合は「2ヶ月と概ね7営業以内(約67日)」と定められています。
これは本人以外が管理すれば領収書の改ざんの可能性が低まることを考慮したものです。
領収書の原本保管について
電子帳簿保存法に対応した保存および管理ができていれば、紙の領収書については7年間の保管義務が不要になります。(その代わりデータで7年間保管しなければならない)
ただし、電子帳簿保存法で年に一回以上の実施を義務付けられている「第三者による定期検査が終了するまで」は保管しなければいけないルールがあります。
仮に、定期検査が1年に1回とした場合、電子化が完了した領収書の原本(紙)は、最低でも1年間は保管しておかなければならない訳です。
原本(紙の領収書)は、定期検査が完了するまでは保管する必要があることを覚えておきましょう。
領収書の破棄について
電子化が完了した紙の領収書は定期検査終了後に破棄しなければいけません。
電子化した時点でデータ化された領収書が原本扱いになるため、紙の領収書は破棄の対象になります。
ただし、e-文書法および電子帳簿保存法の要件(タイムスタンプ付与など)を満たしていない紙の領収書は破棄してはいけません。
領収書を電子化して保存する際の注意点
実際に電子化を始める前に注意点を確認しておきましょう。
所轄の税務署に申請すること
領収書を電子化して保存を始める3ヶ月前までに所轄の税務署に申請し、承認を得ることを忘れないでください。
タイムスタンプを実装すること
電子化して保存する領収書にはタイムスタンプを実装しなければいけません。
タイムスタンプは対象のデータが存在していた時刻を証明し、それ以降データが改ざんされていないことを証明するものです。
認定業者による付与、タイムスタンプに対応したスキャニングサービスや会計ソフトなどを導入する必要があります。
すぐに破棄しないこと
紙の領収書は電子化したからといってすぐに捨ててはいけません。
電子帳簿保存法で定められた定期検査を終えるまで保管しなければいけないことを忘れないでください。
領収書を電子化する手順
では、実際に領収書を電子化する手順についてご紹介します。
1.社内のルール作り
領収書を電子化する前に、経費精算に関してしっかりと社内ルールを作っておく必要があります。
経費精算に関するフローの策定や、定期検査や事故があった際の再発防止策等の内部統制の仕組みを、あらかじめ整えておくことが重要です。
国税庁が定める要件から逸脱しないよう、充分に検討を重ねて社内ルールを決めていきましょう。
2.経費精算システムの選定
経費精算システムの導入において重要なのは、システムが法令に定める要件を満たしていて、自社のニーズに合ったシステムであるかを確認しておくことです。
使いやすさ、サポート体制、セキュリティ対策など、導入コストと合わせて検討する必要があります。
自社に合ったシステムを導入することで、経費精算において効率アップが図れます。
3.税務署への申請
電子化の予定日までに必ず行わなければならないのが、管轄税務署への申請です。
電子化の予定日の90日前までに、申請の実施をしなくてはなりません。
税務署からの許可が下りれば、電子化が可能となります。
4.領収書の電子保存処理
税務署からの承認を得られた後、電子保存した領収書の処理を実施します。
領収書を電子化する方法
電子化の手順を完了後は、実際に領収書を処理を実施しましょう。
ここでは2通りの処理方法をご紹介します。
スキャニング
紙の領収書を高解像度スキャナーを用いて電子化する方法です。
大量の領収書でも効率的に電子化できます。
OCR処理
OCR処理は光学的文字認識のことで、手書きの領収書も含め文字や数字をテキストデータ化できる技術です。
テキストデータ化された領収書は後々、検索や社内共有が容易になります。