デジタル教科書とは?
メリット・デメリット、今後のポイントは?

デジタル教科書のイメージ画像

近年教育現場で導入が進みつつあるのが「デジタル教科書」です。

紙の教科書からデジタル教科書へ移行が進むなか、デジタル教科書にはどのようなメリットやデメリットがあり、どのような使い方ができるのかを理解しておくことが大切です。

ここではデジタル教科書についてわかりやすく解説します。

デジタル教科書とは?

デジタル教科書とはパソコンやタブレット端末、電子黒板、ディスプレイなどで見られる教科書のことです。

デジタル教科書には原則として紙の教科書と同じ内容が掲載されており、現在では紙の教科書と併用して使われることが一般的です。

デジタル教科書は「指導者用」と「学習者用」に区分され、学習者用のデジタル教科書の普及が課題になっています。

文部科学省によるデジタル教科書の定義

文部科学省は学習者用デジタル教科書について「紙の教科書の内容の全部(電磁的記録に記録することに伴って変更が必要となる内容を除く。)をそのまま記録した電磁的記録である教材」と定義しています。

また、2019年4月には「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が施行され、デジタル教科書が制度化されました。

デジタル教科書の普及が進む背景には、新学習指導要領を踏まえた「主体的・対話的で深い学び」の観点があり、特別な配慮を必要とする児童生徒等の学習上の困難低減といった目的があります。

参照元:文部科学省 学習者用デジタル教科書について

デジタル教科書のメリット

デジタル教科書には主に以下のようなメリットがあります。

教科書を拡大して表示

デジタル教科書では、ページを拡大することができるため、視力が低い学習者であっても任意のサイズに調整できるため、学習上の困難低減につながっています。

また、一部のデジタル教科書では明るさ・コントラストの調整も可能となっており、個人に合わせて見えやすい状態に調整することができます。

音声や動画再生で効率的に学習

デジタル教科書では、読み上げ機能や動画再生など、紙の書籍には備わっていない機能を付けることが可能です。

これにより、英語などの語学学習の際に正しい発音を繰り返し聴くことが容易になります。また、動画を通じて描写することで理解を深めることも可能です。特に、滞在歴の長期化に伴い日本語能力の向上が予想される外国人児童や生徒に対し、操作が簡単で自律した学びが可能な機能を導入することで、指導者の負担を軽減することができます。

現在の技術ではまだ完全なデジタル化を実現するのは難しいものの、音声教材との相乗効果が期待されている点字教科書の発展も期待されています。

何度でも書き込んで保存が可能

例えば、一度紙の教科書に書き込んだり、マーカーで線を引くと上書きするのは容易ではありません。

デジタル教科書であれば、何度でも上書き保存ができるため、教科書を汚したり破いてしまったりすることがなくなります。

学習を進めていくうえでさらに重要なポイントが出てきた場合でも、マーカーを消したり、メモを修正することも可能です。

児童の学力分析機能

テストやクイズでの得点を集計することで、児童それぞれの学力を分析して、教員が学習計画を立てる際にサポートします。

また、得点集計だけでなく、学習ログを残すことで学習時間を把握することも可能になります。

学習者の理解度を視覚化しやすくなるため、教育の質が向上する効果も見込めます。

デジタル教科書のデメリット

次にデジタル教科書のデメリットをご紹介します。

視力低下の可能性がある

デジタル教科書は視力低下を招くことがデメリットです。

デジタル教科書はパソコンやタブレット端末などのスクリーンを長時間見続けるため、ドライアイや眼精疲労になりやすく、視力低下を招く可能性があります。

児童や生徒がこうした自らの健康に関わる問題・課題について自覚を持って、リテラシーとして習得し、学習に取り組めるよう指導することの必要性も検討されています。

セキュリティ対策が必要

デジタル教科書はセキュリティ対策が必要です。

仮に、学習者がタブレット端末を紛失した場合やハッキング被害に遭った場合は、氏名や成績、ID、パスワードなどの個人情報が流出する可能性があります。

指導者、学習者、保護者すべてが常にセキュリティ対策に気を使わなければいけない点はデメリットと言えるでしょう。

コストがかかる

デジタル教科書を使うための端末購入や環境整備にコストがかかる点がデメリットです。

デジタル教科書は義務教育課程であっても、保護者または各市町村教育委員会が端末費用や通信料を負担する状態で、すべての教育機関で無料配布を実現するには財政的な課題があります。

仮に、デジタル教科書に対して財政支援がない場合は、学習者や保護者にとって大きなデメリットになります。

破損や故障のリスクがある

端末が破損または故障しやすいこともデジタル教科書のデメリットです。

仮に、破損や故障が起きた場合、一時的に学習できなくなる可能性や、保護者が修理費用を負担しなければいけない場合もあります。

デジタル教科書の普及率を上げるためのポイントは?

デジタル教科書の普及率を上げるためのポイントを見てみましょう。

デジタル教科書の無償配布実現

現在、義務教育課程では紙の教科書は無償で配布されていますが、デジタル教科書は無償ではありません。

文部科学省は「学習者用デジタル教科書は無償給与の対象外」としているため、今後はデジタル教科書の無料配布が実現するかどうかが課題です。

文部科学省の「ニューノーマルにおける新たな学びと必要な環境整備等について」によると、次の小学校の教科書改訂時期である2024年(令和6年度)までに、有識者会議において検討を行うとしています。

参照元:文部科学省「デジタル教科書に関する制度・現状について」

GIGAスクール構想の実現

2019年12月、文部科学省は「GIGAスクール構想(Global and Innovation Gateway for All)」を打ち出しました。

GIGAスクール構想とは、2023年までに小学生から中学生までの子どもたちに、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5ヶ年計画のことです。

GIGAスクール構想の核となるのが「校内LANの整備」「学習者用PC」「学習と校務のクラウド化」そして「ICTの活用」の4つで、学習者用PCの普及が進めば、デジタル教科書も普及するとされています。

2021年、日本政府はデジタル教科書の普及率を上げるための予算として22億円を計上しました。

2021年3月末までに実施された学習者用端末の調達状況の調査によると、全自治体のうち1,748自治体等(96.5%)が、2020年度内に納品完了予定であることが発表されています。

納品が完了しない理由として、端末の需要がひっ迫していることなどによる納期遅延や、OSの選定・仕様の決定、関係者との調整に期間を要したために発注時期が遅くなったことなどが挙げられました。

参照元:文部科学省 GIGAスクール構想について

参照元:文部科学省 GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備(端末)の進捗状況について(確定値)

参照元:文部科学省 ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)

パブリッククラウド方式による配信

情報セキュリティの確保課題を解決した上でパブリッククラウド方式による配信が実現すれば、より多くの学校現場にデジタル教科書を広く導入することが可能となると考えられています。

その安定的な運用体制確立に向けて、文部科学省が令和3年度から実施している、デジタル教科書のクラウド配信に関するフィージビリティ検証事業を活用しつつ検討を続けるべきだとされました。

学校ごとに在籍する児童・生徒の正確な人数の把握から供給システムの確立、自治体及び学校においてはデジタル教科書を円滑に使用できるような通信環境等の整備も急がれています。

参照元:文部科学省 デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議 中間まとめ

参照元:文部科学省 令和4年度 学習者用デジタル教科書普及促進事業

まとめ

ご紹介したようにデジタル教科書は文部科学省が主体となって普及が進められています。

近い将来に標準化されるであろうデジタル教科書の特徴をはじめ、メリットやデメリット、普及のためのポイントなどを理解しておきましょう。

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