アクセシブルな電子書籍制作(EPUB制作)ガイド

アクセシブル電子書籍制作イメージ画像

電子書籍の普及に伴い、視覚障害のある方や高齢者を含め、「誰もが快適に読める本(アクセシブルな電子書籍)」の需要が増加しています。

特に、国内で圧倒的なシェアを誇るAmazon Kindleにおいて、アクセシビリティに対応したEPUB(イーパブ)を制作することは、読者層の拡大や販売施策においても重要性が高まっております。本記事では、法整備の背景からKindleで実現できるアクセシブル対応の具体的ポイント、検証ツールまでわかりやすく解説します。

アクセシブルな電子書籍(EPUB)が必要な理由

電子書籍のアクセシビリティ対応は、単なるマナーや配慮ではなく、法律上の義務や事業戦略として重要な位置づけとなっています。主な要因は以下の3つです。

① 障害者差別解消法の改正・施行

2024年4月1日より改正障害者差別解消法が施行され、これまで努力義務とされていた民間事業者による「合理的配慮の提供」が法的に義務化されました。

参照元:内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました」

デジタルコンテンツである電子書籍(EPUB)やその販売プラットフォームにおいても、情報アクセシビリティへの配慮が求められています。

参照元:経済産業省「アクセシブルなEPUB制作のためのガイドブック」

②読書バリアフリー法

視覚障害者や発達障害・上肢障害などにより紙の本を読むのが困難な「読書困難者(プリントディスアビリティ)」の読書環境を整備するため、2019年6月に読書バリアフリー法が施行されました。

参照元:文部科学省「視覚障害者等の読書環境の整備(読書バリアフリー)について」

さらに経済産業省は、EPUBのアクセシビリティ基準を評価する日本産業規格「JIS X 23761」を制定しており、公的基準に沿ったコンテンツ制作が強く推奨されています。

参照元:カレントアウェアネス・ポータル「電子書籍のアクセシビリティに関する日本産業規格」

③高齢社会と「耳で聴く読書」ニーズの拡大

加齢による視力低下(老眼や白内障など)により、紙の小さな文字を読むことが困難になった高齢者が増加しています。文字拡大や背景色変更ができる電子書籍は、高齢層の読書を支える重要なソリューションです。 また、スマートフォンの音声読み上げ機能を活用した「ながら読書(オーディオブック的利用)」を楽しむ一般ユーザーも増えており、アクセシビリティ対応は市場拡大に直結していると考えます。

Amazon Kindleで実現できるアクセシビリティ仕様一覧

電子書籍標準規格(W3C EPUB Accessibility)で定められている機能のうち、Kindle(KDP)環境で実際に反映・利用できる主な仕様をまとめました。

リフロー型レイアウト

文字中心の書籍(小説、ビジネス書、実用書など)は、原則としてリフロー型EPUBで制作します。全ページが固定画像で構成される「フィックス型(固定レイアウト)」は、Kindleの標準読み上げ機能(VoiceView等)で本文をテキストとして認識できず、文字拡大や背景色変更もできないため、アクセシビリティの観点からは推奨されません。

電子ペーパー端末(Kindle Paperwhiteなど)はモノクロ表示です。またスマホアプリ版では背景を黒にするダークモードで読まれることも多くあります。

電子ペーパー端末(Kindle Paperwhiteなど)はモノクロ表示です。またスマホアプリ版では背景を黒にするダークモードで読まれることも多くあります。 「赤字の箇所を参照」など、特定の色だけに依存した説明を避ける。文字と背景のコントラスト比を十分(4.5:1以上)に確保し、グレー等の薄い文字色を使わない方法も有効です。

音声読み上げ(TTS)

EPUBのHTML記述順序がそのままKindleの読み上げ順序になります。レイアウト上の見た目の配置にとらわれず、本文テキストが上から下へ論理的に読める順番でHTMLコードを記述してください。また、EPUB標準のナビゲーション(nav.xhtml)を正しく生成することで、Kindleのメニューから正確に目次ジャンプが可能になります。

代替テキスト(alt属性)

本文の理解に必要な画像には、客観的で分かりやすい説明文を alt 属性として付与します。Kindleアプリのスクリーンリーダーは、この alt テキストを正確に読み上げます。

見出しジャンプ(論理構造)

見た目(CSS)だけで文字を大きく・太くするのではなく、HTMLのタグ構造を正しく割り当てます。スクリーンリーダー利用者は「見出し一覧」を呼び出して目的の章へジャンプするため、階層を飛ばさずに順序通り記述することが重要です。

Kindle Previewerとスマホ実機で行う検証

制作したEPUBがKindle環境で正しくアクセシブルになっているか、事前に確認する手順をご紹介します。

STEP 1:Kindle Previewerでの基本確認

Amazonが無料で提供する公式ツール「Kindle Previewer」にEPUBを読み込ませます。目次(NCX/nav)のジャンプ動作、画面サイズごとのリフロー状態、フォントサイズ変更時のレイアウト崩れがないかをチェックします。

STEP 2:フォント・背景色チェンジャーの表示シミュレーション

「Kindle Previewer」上で「ダークモード(黒背景・白文字)」や「白黒反転」に切り替え、テキストが見づらくならないか、画像内の透過処理がおかしくなっていないかを確認します。

STEP 3:スマホ実機(Kindleアプリ)+音声読み上げでの最終確認

テスト用ファイルをKindleアプリに転送し、iOSの「VoiceOver」やAndroidの「TalkBack」をオンにして読み上げを実行します。見出しから見出しへのスキップ移動、画像Altテキストの読み上げ、不自然な読み飛ばしがないか実機でテストします。

ポイント:Kindleへの入稿前に、公式のエラーチェックツール「EPUBCheck」を通して構文エラーをゼロにしておくと、Kindle Previewerでの変換トラブルや読み上げエラーを防ぐことができます。

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